そんな過渡期に学生時代を送り、携帯の必要性を感じなかったわたしも大学進学とともに携帯を持ち出した。
持ってみればこんなに便利なものはなく、あるからこそ邪魔なものはない。
「きみにしか聞こえない CALLING YOU」(乙一:角川書店)
おそらく高校で唯一の、携帯を持っていない生徒であるリョウは、頭の中に自分だけの理想の携帯を思い描くようになる。ある日、着信を知らせるメロディーが流れる。それは頭の中の携帯から流れる音だった。リョウと同じく「自分の携帯」を持つ少年シンヤからの電話は、さみしさを抱えたリョウの心を暖めて行く。
角川書店から「失われる物語」が文庫化したそうで、そちらにも収録されている「Calling You」他の短編集(スニーカー文庫)。
必ずしもhappy endではない物語たちは、自分ならどの道を選ぶのだろう、と考えてしまう。
リョウの選択がよかったとも思うし、シンヤの選択を愚かだとも思う。
携帯は情報ツールで通話だけが目的ではない。メールやネットや音楽やカメラやその他いろいろ。
そんな中、大切な人だけに通じる電話があったら。それが頭の中にあるようにだれにも触れられない自分の理想の携帯だったら。
携帯で情報を漁ることはなくなり、幸せなことだと思う。
きみにしか聞こえない―CALLING YOU 販売元 : Amazon.co.jp 本 価格 : ¥ | |